犬を飼うということ

Withdog 犬と飼い主の絆について

【犬との出会い】イヌ、いらん? ~思い出のトショとツキ(前編)~【忘れられない母子】

【関連コンテンツ】

思い出のトショとツキ
思い出のトショとツキ

撮影&文|ほっぷのトモダチ
 

今日は我が家にとって思い出深い、2匹の犬の話をしようと思います。
その2匹は親子で、名前はトショとツキと言いました。我が家の家族全員をすっかり犬派にしてしまった、思い出深い犬たちです。もう亡くなって随分経つのですが、家族全員にとって、今も忘れられない大切な存在です。

今振り返れば、あれはもうずいぶんと昔のことになります。
ある日、小学生だった弟が、突然1匹のメスの犬を連れて帰ってきました。聞けば友達から、「イヌ、いらん?」と持ち掛けられたのだそうです。

普通ならば、両親に許可も得ずに犬を連帰ったら、いくら家や土地が広い田舎でも、「返してきなさい」と言われますよね。
しかしながら我が家は、家族全員が動物好きで、以前にポメラニアンを飼ってたこともあって、誰も反対することなく、すんなりとその子は我が家の子になりました。

その犬こそが、今回の主人公であるトショです。

 

トショの名前の由来は、夢のお告げのようなものでした。
実はトショがくる少し前に私の妹が家に新し犬が来る夢をみたのです。
夢の中で、妹はその犬をトショと呼んでいたのだそうです。
”図書館”のトショなのですが、妹は特段本が好きという訳でもなく、なぜトショなのかは分かりません。たが兄妹でその話をしたときに、”トショ”という語感がいいなぁという話になりました。

トショの月齢は定かではありません。見たところでは、生後2ヶ月ぐらいだったと思います。初めて見たときには、「デカイ耳だな」と思ったことを覚えています。

小さな体に比べて、とにかくタレ耳がデカかったのです。

初日のトショは、とにかく鳴きまくりました。
親と引き離されて不安だったから? 兄妹がいなくなって寂しかったから?
その日は兄妹弟皆で、トショと同じ部屋で一緒に寝てあげました。

次の日からのトショは、すべてを理解したようにおとなしくなりました。
すぐに家族に慣れたのは、元々おっとりとした性格で、ヒト好きだったからだと思います。

 

いつものトショのことも書いておきます。

うちは家には土間が会ったので、そこにトショの小屋を作ってあげました。外飼いと室内飼いの中間ですね。田舎では今も外飼いが結構多いのですが、当時はもっとでした。トショは夜は土間で過ごしていましたが、昼は木にクサリつないでやって、庭でのんびりしたりしていました。食べさせていたのは、家族の残りのゴハンです。その当時は、どこの家も同じようなものでした。

トショは食いしん坊で、あげる物は好き嫌いなく何でも良く食べました。
あっ、プチトマトを除けばです。

トショが鳴くのは、散歩のときとゴハンのときくらいでした。
「くぅーんくぅーん」と小さな声で訴えかけてきて、その後「ワンワン」短く鳴いて、『時間だよ』と教えてくれるのです。 

散歩の担当は、平日は主に父と弟です。けっこう遠いところまで行っていたので、30分から1時間はかかっていました。

それから兄妹皆が、学校から帰るとトショと遊んでやっていました。
トショはタオルが大好きでしたから、主に引っ張り遊びですね。咥えたら放さないのですよ。それと、ボールの取ってこいも好きでした。

そんな風にして、トショと家族は楽しく暮らしていました。

 

そのトショが大きくなり、2歳くらいになったときのことでした。近所に住むイトコの家の雄犬コロが、うちに遊びに来るようになりました。

もちろん、コロは放し飼いではありません。脱走して家にくるのです。
以前に何度か、サンポでうちに立ち寄ったことがあって、それで家の場所を覚えたのだと思います。

犬って賢くて、楽しかった場所はちゃんと記憶しているものなんですよ。

うちもうちで「コロがまた遊びにきとるわぁ」って感じで、慌ても騒ぎもしません。イトコの家に連絡もしません。コロはいつも知らない間に、自分でイトコの家に帰っていました

あっ!そうそう!
コロは2回くらい通報されて、保健所に連れて行かれたことがあるんです。
夜、かえってこなくて心配したイトコ家族が、そのたびに保健所に探しに行っていました…(^_^;)

今だったら考えられない、田舎ののどかな暮らしです。

さて、そんなある日のこと、私はトショの異変に気が付きました。
お腹が妙に大きくなっているのです。

ボディタッチが多かったので、外見で分かるようになるまでに分かりました。
トショは妊娠したのです。
お相手は――、もちろんコロ以外にありません。

すぐにそのことを家族に報告したのですが、家族は誰も驚きません。
騒ぐことも、慌てることもありませんでした(^_^;)

田舎と言うのは、動物の生も死も、割と身近にあるものなのです。
子供心には、動揺よりもむしろ期待の方が大きかったように思います。
ワクワクするとでもいうか――
少なくとも兄妹弟は、いつもそんな感じでした。

 

トショの様子ですが、妊娠してもいつもと変わらず普通でした。
でも、産むときは自分で分かるのですね。小屋の毛布とかで巣をつくり始めました。
「そろそろだな」
と思ったので、家族は新聞紙とかタオルとか、いろいろ置いてあげました。

出産は夜中のうちだったので、朝起きてみたら子犬がいたという感じです。

トショは 1匹も亡くすことなく、上手に出産していました。
おっとりした性格そのままで、産んだ直後でも怒ったり隠したりすることなく、すぐに子犬を見せてくれたり、取り上げさせてもくれましたよ。

誰にも教わらないのに、トショは立派な母犬でした。

仔犬たちは可愛かったのですが、ずっとうちで飼う訳にはいきません。だいたい2〜3ヶ月くらいで里子にだしました。

別れは寂しかったけれど、「とにかく元気でなぁ!」ってかんじで送り出しました。

子犬たちを渡すときのトショは、なんだかさみしげな表情でした。
子どもを探すような仕草を見せたりもしていました。
――でも、それだけです。

トショは全てを悟っていたようでした。
トショはうちに来た時から、そんな犬だったのです。

実はこの後も、トショは子供を産みます。コロとの間に、合計で20匹(1度に5匹ぐらいで4回)ぐらいでしょうか。自然分娩で夜中にしらない間に産んでたこともあるし、昼間、母が付き添いで見守ったときもありました。

避妊手術してなかったので、産まれ放題でしたが、幸い1匹以外は、みんなもらわれていきました。

そのもらわれなかった、1匹――
それが今もトショと共に、我が家の思い出に残る、ツキというメスイヌです。

 

――思い出のトショとツキ(前編)つづく――

作:ほっぷのともだち
 

――後編――

ツキはトショの子供でした。
3回目の出産で、唯一もらわれていかなかった子です。
2匹は仲が良くて、近所の子供たちからも愛されました。
月日は流れ、トショ14歳。
急に体調を崩しました。
トショは、イトコの家のコロと子供をもうけました。
懐かしくなる、田舎での犬との生活。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

同じ作者の猫のエッセイです

私が猫のほっぷを迎えた理由は?

ずっと犬派でした。
大好きだった母子の犬を亡くし、もう犬は飼えないと思っていました。
「ねえ、ネコいらない?」
同僚の一言。
それで、猫も良いかなと――
「ちいさくて、ふわふわ!」
こうして、ヤンチャな『ほっぷ』がうちに来ました。

うちの子がうちに来るまで

我が家が犬を迎えるまでの話

雑種(保護犬)|旅人(たびと)|全2話

片目を失った犬を、保険所から引き取ることにした夫婦。
犬との出会いはいろいろとあって、迎える時の葛藤も様々です。
犬にハンデがある場合は、特にその葛藤は大きいはず。普通ならば――
それをものともしない、優しい心を持った飼い主と犬とのお話です。

黒柴|哲

私はシベリアンハスキーの先住犬ハッシーを失いました。
ハッシーは生活の全てで、天使だと思っていた犬でした。
「もう犬とは一緒に暮らせない」
そう考えていた私はある日、偶然に訪れたペットショップで、不思議なオーラを放つ子犬に巡り合いました。

 

© 2017 Peachy All rights reserved.