うちの子がうちにくるまで|No.33
何事にも始まりはありますね。どんな愛犬家もベテラン飼い主にも、始まりの犬がいます。本話は後に、噛み癖のある問題犬、心(ここ)を迎えることになる、karaageさんが最初の犬を迎えたお話。しかもkaraageさんは当時、犬にはあまり関心が無かったのだとか。
そのkaraageを変えたのは、偶然に出会った一匹の可愛いコーギーでした。
『世の中には、こんなに可愛い動物がいるのか』
それが、最初の感想だったそうです。
コーギーってどんな犬?|今まで犬を飼ったことがない|初めて飼うのが不安|皆さんどうやって飼うのを決めるの?|経験者の話が聞きたい
今日は私にとって思い出深い、花のお話をしたいと思います。
花は私にとって、最初の犬でした。
正確に言えば幼稚園の頃、家にワンコがいた記憶があるのですが、残念ながらその頃には、飼っていたといえるほどの思い出がありません。
だから、気持ちの上では花が初めての犬。私が飼いたいと思い、自分で飼うことを決めた子でした。
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花を飼う前から犬好きだったかというと、そういうわけでもありませんでした。
ただ動物は好きでしたので、ハムスターを飼っていました。
親の私がそうだからでしょうね。うちには子供3人(息子、娘、娘)がいますが、子供達もそれまで、犬が飼いたいと言ったことはありませんでした。
その私を変えたきっかけは、ある日偶然に出会ったコーギーでした。
その日私は娘ふたりを連れて、近くのホームセンターに買い物に出掛けました。
帰り道の緑道を歩いていた時のことです。私は前方に、散歩中のコーギーがいるのを見つけました。
「可愛い!」
私は思わず、悲鳴のような声をあげてしまいました。実は私はコーギーを見たのが初めてでした。ドラマとか紅茶のCMでは見たことはありましたが、生で見たことはそれまで一度もなかったのです。
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私と娘は、引き寄せられるように、そのコーギーの側に行きました。
「触って良いですか?」
と訊くと、その子を連れていた優しそうなお姉さんは、「どうぞ」と言ってくれました。
「可愛い~!」
「可愛いねえ!」
もう私も2人の娘も夢中です。
その子はとても人懐っこくて、私達に触られと嬉しそうに尻尾を振りました。
そしてテンションの上がったその子は、私たちに飛びついて来てペロペロと――
顔を舐められた時は「やられた!」と思いましたね。
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大げさでなく、私は『世の中には、こんなに可愛い動物がいるの?』と思ったのです。
とにかくその子は、”可愛い”としか言いようがありませんでした。
「うちにも、あんなワンちゃんがいるといいねえ~」
「いいねえ~」
その日私と娘たちは、そんな風に話しながら家に帰ったのでした。
私たちはわずかな時間で、そのコーギーにノックアウトされてしまったのです。
思えばもうその時から、花をうちに迎えるまでのカウントダウンが始まったようなものです。
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とはいえ、すぐに犬を飼うことを決めたわけではありません。
「可愛い」と「飼おう」の間には、まだまだ大きな隔たりがありました。
それから私たちがしたことは、『コーギーの飼い方』と言う本を読むことでした。
可笑しいでしょ? 犬がいもしないのに、飼育本を買うなんて。
でも私たち母娘は、そうやってコーギーを飼った気になっていたのです。
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私がペットショップを訪れたのもその頃です。
我が家は歩いて行けるところに、ペットショップが1軒あります。
その時も、別にすぐに飼いたいと思っていた訳ではありません。”飼った気になる”ことの延長で、散歩がてら行ってみただけでした。そこにコーギーがいるかどうかも分からずに。
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お店に入るなり、私の目はショーケースの一つに釘付けになりました。
「いた!」
そこにいたのは、それはそれは可愛いコーギーでした。
しかし――、その子には『売約済み』の札が――
「残念!」
これもまた可笑しな話です。まだ飼うつもりもなかったくせに、その可愛い子が、誰かの家に行くと思うと残念で仕方がないんですね。私は店員さんに「もし又こんな可愛い子が来たら連絡して下さい」と言って、連絡先を残して家路につきました。
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その時の気持ちとしては――、未練たらたらでしたね。
くどいようですが、飼うつもりもなかったくせに、未練はたらたらなんです。
――人の気持ちと言うのは、不思議なものです。
実はもうこの時、運命の歯車は回り始めていたのですが、その時に私はそれに気が付くはずもなく――
携帯の着信音が鳴ったのは、それから3日後のことです。
見知らぬ発信元……
電話に出てみると、あのペットショップからでした。
「先日のコーギーちゃんなんですが――」
「はい」
「実は、キャンセルになりまして」
「え?」
「どうされますか?」
「……」
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頭の中では、考えがグルグルと巡ります。
しかしそれも一瞬のこと。
私は「今すぐに行きます!」と即答していました。
母子家庭の貧乏家族でしたが、それはそれ――
札束握りしめて飛んで行った、能天気な母ちゃんでした。
実はこの時、子供達3人は田舎の母の所に行っていて居なかったのです。
だから、誰にも相談せずに決めました。
田舎にいる子供たちには、電話での事後報告です。
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電話のあった日は手続きだけで、お迎えは後日です。
私は早速、ケージやペットシーツ、フードを用意すると、お迎えの日を待ちました。
もう名前も決まっていました。
以前から家族で、「もしもうちにコーギーが来たら、花って名前がいいね」と話しあっていたからです。好きな俳優さんが飼ってたコーギーが華と言う名前で、それをいただいてハナに。そして病院で名前を呼ばれた時の事を考えて、カタカナじゃない名前にしようということで、華から花に。
そしていよいよその日――
うちの子になる花は、持ちかえり用の、手提げの段ボールの箱に入ってました。
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家に着いた花ですが、怖がる様子もなく家の中を探検してました
すぐに慣れたというか、前からいたかのような自然さでした。
子供たちはまだ田舎にいます。帰ってくるのは翌週。
だから、それまでの間は、花は私が独り占めです。
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実はここで私は、花に申し訳ないことをしてしまいました。
あまりにも可愛くて可愛くて、嬉しすぎて、ついつい花を構いすぎてしまったのです。
うちに来たばかりなのに、花は具合が悪くなって、ペットショップに併設されてる動物病院で診てもらうことに――
私はここで獣医さんから、「いくら可愛いからって、構いすぎたらダメ!」と注意を受けてしまいました。もう大反省です。
さて、1週間がたちました。子供たちが家に帰ってくる日です。
「ただいま!」
子供たちが玄関を開けて、入ってきたときのことでした。
何と花は、初めて見る子供たちを恐れもせず、まっしぐらに走って行きました。
「初めて合うのに家族ってわかったん? 賢いなあ」
もう子供たちは、「可愛い、可愛い」で大騒ぎです。
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私は早速母親の威厳を示して「疲れるから、あまり構っちゃダメ」と、子供たちにきつく釘を刺しました。もちろん――、私が構いすぎて、病院に連れて行ったなどとは、口が裂けても言えません。
さすがに、もう時効だと思うので、この記事でカミングアウトです。
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さて、それからの花と我が家です。
散歩は行ける時に皆でいきました。
皆で行けない日は、仕事場が近い私が、一時間の休憩時間に帰ってきて散歩したり。
我が家はすべて、花中心の生活になりました。
以前の我が家は、子供たちはテレビに釘付けで、ゲームし放題でした。
しかし花が来てからは、花を囲んでワイワイと話す様になって――
我が家はケンカもすることがない、明るい母子家庭になりました。
花、うちに来てくれてありがとう。
――花がうちにくるまで|おしまい――
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――うちの子がうちにくるまで・次話―――
初めて犬を迎えてから8か月後のこと。
たまたま立ち寄ったペットショップに、先住犬と同じコーギーがいました。
「抱っこしますか?」と店員さん。
『抱いたら終わりだ』と思う作者。
しかし一緒にいた娘2人が、その子犬を抱っこしてしまったのでした。
――うちの子がうちにくるまで・前話――
(2話構成です)
犬を迎えたのは、当時学校に疲弊していた一人息子のためです。
息子が突然「犬を飼いたい」と言い出したのです。
一度も犬を飼ったことはありませんでした。
それでも飼おうと思いました。
うちの子になった”はな”には、トレーニングが待っていました。
トイレのこと、それから小食だから、食べてもらうこと。
新米飼い主だから、本を見ながらはなと一緒に勉強をしました。
そんな風にして、あっという間に13年が過ぎました。
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この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――うちの子がうちにくるまで、第1話です――
昔からいつかはワンを飼いたいと、ずっと夢見ていたんです。
でも、夢と現実の差はでっかいですよね。結局はずっと、実現できずじまい。
――そんな夢を叶えた飼い主さんのお話。
犬との出会いは運命に似ています。
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