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【はじめての多頭飼い】始めはそんなつもりはなく ~風がうちにくるまで~【ペットショップで一目ぼれ】

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うちの子がうちにくるまで|No.34
風がうちにくるまで

撮影&文|karaage
 
今日のお話は

偶然に出会った一匹のコーギーがきっかけで、人生で初めての犬を迎えたkaraageさん。
もちろん犬種は、希望通りのコーギーです。楽しい犬との生活が始まりました。

十分に満足をしていました、それ以上を望んだわけではありません。しかし世の中は面白いものです。それからわずか8か月後に、2匹目の犬との出会いが待っていたのです。

こんな方に:
コーギーってどんな犬?|コーギー同士での多頭飼いはあり?|経験者の話が聞きたい

 

前回の記事では、私と我が家にとって初めての犬、花を迎えるときのお話をしました。今回はその花の妹分で、2匹目として迎えた、風のお話をしようと思います。

実を言うと私はその当時、2匹目の子を飼うことなど、全く考えていませんでした。
花との生活が始まってから、犬を通じて新しい交遊も生まれましたし、犬と暮らすことの楽しさは十分に分かっていました。でも、2匹目となると話は別です。

ではどうして、2匹目を飼うことにしたのか?
――と思われるでしょうね。
花のときと同じで、その時は偶然に、そして突然にやってきました。

 

あれは花がうちにきて、8カ月ほどが過ぎたある日のことです。

私はワン友さんに誘われて、ご飯を食べに行きました。娘2人を連れての、楽しいバイキングです。このときばかりは、花はうちでお留守番です。

食事が終わってぶらぶら歩いていると、ペットショップがありました。入り口にはフードやオモチャが並んでいて、奥の方にはワンコたちがいるショーケースが見えました。

その場にいる全員が犬好きですから、自然と足はその店に――

ショーケースには沢山の子犬、子猫がいました。小さな命は犬でも猫でも、無条件で可愛いですね。すぐに大きくなってしまうので、わずか数カ月だけの貴重な時間です。
そのうちに「コーギーおる」と娘が言いました。指さす先のショーケースには、確かに見慣れた姿のコーギーがいます。それも2匹も。

説明書きを見ると兄妹犬のようで、一匹はお尻にウンコを付けていました(笑)

その子たちを見ていると、店員さんが近づいてきました。
「コーギーがお好きなんですか?」
やさしそうな笑顔。ペットショップのあるあるですね。

「うちにもコーギーおるねん」
と答えると、店員さんはもう満面の笑み。「抱っこしますか?」と、またペットショップのあるあるです。

私の頭の中は、その瞬間に考えが巡りました。もちろん抱いては見たいのです。コーギー好きですからね。しかしその子はあまりにも可愛い――
「抱いたら終わりだ」
と、私は思いました。

躊躇している私の気持ちを察したのか、店員さんのターゲットはすぐに娘たちに変わりました。
「抱っこしてみる?」
その言葉に娘たちはまんざらでもなく、コクリと頷きました。

 

「抱っこさせて大丈夫?」
というのは、私の心の中の声――
でも、「でもまあ、大丈夫かな」と、もう一人の私がささやきます。それまで娘たちは、2匹目をそんなには欲しがっていませんでしたからね。

「はいどうぞ」
と差し出された子は、あのお尻にウンチが付いてた子です。ウンチが付いたまま渡されましたが、もう乾いてたので誰も気にしませでした(笑)
娘たちはそのフワフワな毛の子犬を交互に抱っこして、何ともいえない顔をしました。

「お母さん」
娘は私にも抱けと差し出したのですが、私は伸ばしそうになる手を必死に抑えました。何故ならば、抱いたら終わりだからです。私の性格は、私が一番知っています。

しかしながら私はここで、大きな誤算をしていたようです。
忘れていました。娘たちが私の子供であるということを。
娘たちは私の決死の努力を、一瞬で吹き飛ばす一言を呟いてしまうのです。

その子犬をもう一度抱いた娘たちは、どちらともなく小さな声で言いました。
「風(ふう)ちゃん」と――

それは、いつかもし、うちに次のコーギーが来たら付けてあげようと、娘たちと決めていた名前。二人の顔を見ると、もううちの子を見るような表情です。

思わず私も、心の中で言ってしまいました。「風ちゃん」と――

子犬の可愛さにやられて衝動的に――
と思われるかもしれませんが、そうではないんです。上手く言えないんですけど、子犬だからとか、可愛いからとか言う以前に、その子は娘が抱いた瞬間に、もううちの子になっていたんです。

 

ではそのまま連れて帰ったのかというと、そうではありません。
子供には内緒でしたが、その時、その子犬を連れて帰れるくらいのお金を持っていました。

そうしなかったのは、そんなに簡単に命を引き取る姿を、娘に見せたくないという親心が半分。あと半分は、自分たちの決心が揺るぎないことを確かめるためです。

「帰ろうか」
と私は言いました。娘たちには風を迎えることは言いませんでした。
娘たちは駄々をこねるでもなく名残惜しそうにするでもなく、店員さんに子犬を返すと、「ありがとう」とお礼を言って店を出たのでした。

さて、その後なのですが、あの子犬のことを家族で話し合ったのかというと、そうではありません。相談をするまでもなく、子供たちの気持ちは分かります。

むしろ私が確認したかったのは、私自身の気持ちだったのかもしれません。
で、私の気持ちはというと――
やはり変わりませんでした。ペットショップで感じたまま、あの子は「うちの風ちゃん」です。気になって仕方なかった私は、ペットショップ「まだいるか」という電話していたくらいです。

残る問題はたった1つでした。
私は常々子供たちに「うちにはお金がない」と言っていたので、願えばすぐに高いワンコが飼えると思わせないようにしたい。それだけ。

そこで私は、子供たちに内緒で風を迎える準備をし、うちに来る当日に打ち明けることにしました。いきなり伝えるのは、先住犬の花のときと似ています。

子犬を迎えることをワン友さんに話すと、ワン友さんは、自分が車で迎えに行って連れて行ってあげる、と言ってくれました。うちには車がないので、とても有難かったです。

ここまでが、出会ってから4日の間の出来事です。

その日の朝、私は子供たちが学校に行く前に「今日の夕方に風ちゃんがうちに来るよ」と打ち明けました。私が「風」と言っただけで、子供たちは全てを察したようで、もう大喜びです。友達を呼んで帰ってきて、皆でソワソワしながら到着を待ちました。

 

風が家に到着したのは、約束通りの夕方です。花の時と同じように、持ち手の付いた段ボールの箱に入っていました。

慎重にそれを受け取って――
そろりと床に置いて――

――いざ、開封――

風がひょいと首を箱から出した途端に、子供たちの歓声が上がりました。
友達と一緒に可愛い、可愛いと言って、もう大騒ぎです。

一方、風の方は物怖じせず堂々としてました。まずは子供達、それから子供の友達と、みんなに抱っこされて愛嬌振りまきます。

やがて花もやってきました。花は不思議そうに風をみて、匂いを嗅ぎに行きました。
何か起きるかと思い、少し緊張しましたが、心配には及ばずでした。
まだ花も10ヵ月程の子犬です。威嚇もせず自然に受け入れたようでした。

そうそう、その後の話ですが、子供たちは友達からよく「お前んち金持ちやな。犬2匹もおるから」って言われてたらしいです。いやいや実際は犬貧乏でした。子供にしたら金持ちの家に見えたんでしょうね。

 

それからの風は、花にお母さん代わりをしてもらって、元気に過ごしました。
犬は不思議ですね。わずか半年ほど先に生まれただけの花が、しっかりと風の面倒をみるのですから。

でも、イタズラした花に濡れ衣を着せられて、いつも怒られていたのは風の方。年に1度の大喧嘩でも、怒られるのは風の方。面倒をみたのは、お互い様かもしれません。

風は母ちゃんが大好きで、いつもストーカーしていたっけ。
花とは姉妹じゃなかったけどいつもくっついてた。
風は花がいて幸せだったと思う。

こうやって、我が家にはもう一人の家族が増えました。
そして我が家では、楽しい多頭飼いの生活が始まったのでした。

やがて犬にお金が掛かる事を知らずに…笑

 

――風がうちにくるまで|おしまい――

うちの子がうちにくるまで|No.34
犬の名前:風(ふう)
犬種:ウェルシュ・コーギー
飼主:karaage
 
うちの子がうちにくるまで、とは
愛犬を家に迎えるまでの葛藤を、飼い主自身が、自分の言葉で綴ったエッセイです。
こんな効果もあります:愛犬、愛猫を今すぐ100倍可愛くできる、最も簡単な方法
 
犬や猫と暮らすあなたへ

『うちで飼えるかな?』
『きちんと面倒を見られるかな?』

犬や猫を、”はじめて”飼う時、ほとんどの方はこう思ったことでしょう。
平均年齢でいえば、15年も生きる小さな命を預かるのだから当然ですね。
我々はそこで大きな決心をし、葛藤を乗り越えたからこそ、今、犬や猫と暮らしています。

どうかその思いを、忘れないでください。
その時の思いがあれば、我々はどんな時でも犬や猫と暮らしていけます。

【飼えるかなより

――うちの子がうちにくるまで・次話――

ある日、私はソファーでいびきをかいている豚を目撃しました。
――豚??
イエイエ、それは豚ではなく犬。
作者ががブルテリアに心を奪われた瞬間でした。

――うちの子がうちにくるまで・前話――

犬を飼おうと思ったことも無かった作者。
その作者を変えたのは、偶然に出会った散歩中のコーギーでした。
『世の中には、こんなに可愛い動物がいるの?』

 

――うちの子がうちにくるまで、第1話です――

昔からいつかはワンを飼いたいと、ずっと夢見ていたんです。
でも、夢と現実の差はでっかいですよね。結局はずっと、実現できずじまい。
――そんな夢を叶えた飼い主さんのお話。
犬との出会いは運命に似ています。

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