もう一度、うちの子がうちにくるまで|No.6 - 2
生後間もない幼犬に出会ってから1ヶ月が過ぎ、ようやく面会が許される日がやってきました。子犬は両手に余るほどの大きさに成長していて、とにかく良く動き回ります。
そして撫でればふわふわの柔らかい毛。それはずっと忘れていた、子犬の感触でした。
ここにきて、我が家はやっと子犬に名前をつけてあげました。それまではずっと子犬を『あの子』と呼んでいたのです。それにはある理由がありました。
更に1ヶ月たつと、子犬が我が家にやってきます。そこで我が家では子犬を迎える準備を始めました。サークルを買って、トイレトレーを買って――
こんな方に:愛犬を亡くした|次の子を迎えるかどうか迷っている|すぐに迎えると、前の子に申し訳ない気がする|皆さんどうやって次の子を飼うのを決めるの?|経験者の話が聞きたい
子犬を迎えると決めてからしばらくして、ブリーダーさんから連絡が来ました。
「名前は決まりましたか?」
血統書を登録するので、名前を決めて欲しいと言うことでした。
通常の順番で言うと、犬はまずブリーダーさんが犬舎の名前を入れたルールにしたがって命名し、それを血統書で登録します。普通はその後で飼い主が決まるので、飼い主は血統書名とはべつに、自分の家での名前を付けることになります。
●
しかし我が家のように、血統書の登録前にうちの子になることが決まっていたら、血統書の名前も飼い主が決めることができるのです。
(これは今まで、知りませんでした)
さて、名前は?――
しかし、我が家はまだ名前を決めていませんでした。理由がありました。
ブルテリアの幼犬は、事故が多いのだと聞いていました。
事故と言うのは病気もあるのですが、それよりも気がかりだったのは、母犬が子供を食べてしまうことです。母性の強い動物には時々あるようなのですが、何かの切っ掛けで自分の子供が奪われると思ってしまうと、それを防ごうとして、なんと自分で子供を食べてしまうのです。
折角迎えることにした子犬が、いなくなってしまうのは耐えられません。
名前を付けて心待ちをしている子ならば、尚更です。
●
名前については、以前にこんな話を聞いたことがありました。
ヨーロッパのある村では、子供が小さい内は木とか石とか自然物の名前にを付ける風習があるのだそうです。何故かと言うと、可愛い名前を付けると、死神がさらいにくるからなのだとか。
だから我が家もこの習わしに従って、あの子犬がうちに来るまでは名前を付けず、『あの子』とだけ呼ぶことにしていました。こんな理由で、あの子犬には名前がまだ無かったのです。
――で、血統書の名前をどうするか?
色々と考えて、名前は『ピーチー』にしてもらいました。あの子は血統書に登録された名前が先代犬の名前『ピーチー』なのです。ちょっと嬉しくなりました。
それからほどなくして、『あの子』は生後1ヶ月を迎えました。
1ヶ月と言うと、子犬の免疫も安定してきて、普通に面会が許される時期です。
『あの子』はもううちの子になることは決まっていましたが、生後1ヶ月の姿がどうしても見たくて、また2時間半かけてブリーダーさん宅にお邪魔をしました。
●
リビングルームに通されると、前回片手に乗るほど小さかった『あの子』は、もう随分大きくなって両手に余るほどになっています。筆者と奥さんの姿を見ると、ケージの中で伸びあがって、尻尾を左右に振って歓迎しくれました。
これがその時の動画です。
「人懐っこい子だね」
その仕草を見て安心しました。ピーチーも人懐っこい子でしたからね。
それからは、子犬をケージから出して撫でたり、写真を撮ったりです。
1つだけ、どうしてもやってみたいことがありました。両手でその子を持ち上げて、『高い、高い』をしてみることです。
●
実はピーチーと初めて会った日に、『高い、高い』をしたら、ピーチーはものすごい勢いで尻尾を振ったのです。だからその子が『高い、高い』で尻尾を振ってくれれば、ピーチーの生まれ変わりだと感じられそうです。
「高い! 高い!」
そう言いながら持ち上げてみました。
――しかし、その子は不思議そうにこちらを見るだけで、尻尾は振りません。怖がっているわけではないのですが、嬉しくもなさそうです。
「高い! 高い!」をもう一度やってみましたが、ごくわずかに尻尾を震わせるだけで、ピーチーのようにブンブン振ることはありませんでした。
「そうか、やっぱり生まれ変わりではないのか」
そう思って、正直言って少しがっかりしました。でも、それはそれです。
この日は、生後1か月の子犬に会えただけで満足でした。
面会の翌日のこと。
生後1ヶ月を過ぎたので、そろそろ名前を決めてやろうと思いました。いつまでも『あの子』のままでは可哀そうです。
1つ目の案はピーチー。先代と同じ名前であり、血統書に記載した名前です。
筆者は子供の頃、実家で3匹犬を飼ったのですが、それが3匹とも『ちび』という名前でした。代々同じ名前と言うのも良いものです。ちょうどツイ友さんから、フランスの有名デザイナー、サンローランも、歴代のフレンチブルには同じ名前を付けていたと聞いたこともあって、ますますその気になりました。
問題はピーチーの思い出話をするときに紛らわしいだろうということ。
先代のピーチー、今のピーチーとややこしいことになりそうです。
●
2つ目の案は、ピィ子です。
ブルテリアは肌がピンクなので、色に因んだ名前と考えたのですが、思えば17年前に考えに考え抜いてピーチーという名前を付けているので、我が家にとってピンク系でそれを上回る名前は出て来そうにありません。
そこで思い付いたのがピィ子です。
最初はふざけて言いだしたもので、候補の中では最も優先度が低かったのですが、何回か口に出して呼んでみるうちに、「悪くないな」と思い始めました。親しみやすいし、印象的だし、名前を聞いた方が笑ってくれそうな気がしました。
命名:ピィ子
結局、ピィ子で決定です。敗者復活から優勝を勝ち取ったような印象ですが、今ではとても気に入っています。
そんなことをしているうちに、生後2か月の日が迫ってきした。
それは、ピィ子のお迎えの日でもあります。
その日の準備のために、我が家はもう年々も行っていなかったペットショップに行きました。ピーチーが去って3年程でしたが、驚いたことにペットショップの中は様変わりで、小型犬用のもので埋め尽くされていました。中型犬の可愛いグッズはあまりなくて、選択の幅が限られます。中型犬でもそうなのですから、大型犬用のものはもっと減っていました。
新しいサークルや、トイレマット。それとオヤツを少し。
首輪やリードは、ピーチーのお古を使うことにします。
●
準備万端。いよいよお迎えです。
お迎えの日は8月26日に決まりました。実はその日は、ピーチーの誕生日でもあります。
お迎えには、17年前にピーチーが入ってきたダンボール箱を持っていくことに決めていました。ずっと大事にとってあった記念の箱です。そしてもう一つ。ピーチーが旅立つ時に、なぜかたった1枚だけ残して行ったトイレシート。
これらをピーチーが通院の時に入っていたピンクの手提げ袋に入れました。段ボール箱はピッタリと手提げ袋に収まりました。
お迎えの日は、ブリーダーさんが最寄駅まで子犬を連れて来てくださいました。
面会の日と変わらず、ピィ子は物おじすることもなく、オヤツでもらった大きな豚耳と格闘していました。
ブリーダーさんにケージから出されたピィ子は、ピーチーの箱に入って、引き渡しは完了です。
●
帰りの電車を待つホームで、待ちきれずに箱を開けてみました。
元気に箱から顔を出した姿がとても印象的でした。
これは、ホームで撮影した動画です。
●
家に着いて箱から出たピィ子は、怯えもせず、家の中を歩き回りました。
これがその時の動画。箱から出す瞬間です。
●
ひとしきり家の中を探検させてから、用意してあったサークルに入れあげると、ピィ子すぐにぐっすり寝てしまいました。
こんな風にしてうちの子になったピィ子ですが、2020年8月26日で、我が家に来てちょうど1年になりました。早いもので『うちの子記念日』です。
最初はピーチーの生まれ変わりを期待したピィ子。しかしピィ子はピーチーとは全然違う子のようです。ピーチーほど食いしん坊ではありませんし、ピーチーが大好きだった木の棒にも見向きもしません。ピーチーが得意だったほふく前進も、今まで1度も披露したことがありません。
でも、それがまた面白いです。
以前に筆者の親友である犬友さんが、新しい子を迎えた時の話をしてくれたことがありました。前の子と今の子は全然違うのだけれど、同じように可愛くて、言うなれば別々の面白い本を読んでいるみたいだと、その犬友さんは言いました。
ピィ子を迎えてみて、確かにその通りだなと頷きます。
●
ピィ子と散歩していると、ピィ子に重なってピーチーが見えるときがあります。まるで2匹を連れているようです。
全然違う個性の、全く違う犬なのですが、2匹がどこかで強く強く繋がっていることを実感します。もしかするとピーチーもピィ子も、『うちの子』というシリーズ物の本なのかもしれません。
ピィ子は今日も元気いっぱいです。
トイレを覚えるのに時間が掛かって、今も時々失敗をします。拾い食いをして、病院に相談に行ったこともありました。1歳になるのと同時に反抗期に入って、言うことを聞いてくれないこともあります。
しかし――、飼い主の布団を占拠して、高いびきをかいて寝ている姿を見ると、そんな些細な苦労はどこかに消えて行ってしまいます。
●
いつかピィ子も老犬と呼ばれる時期が来て、やがて別れの日もやって来ることでしょう。しかしまだ当分はその心配をすることはなさそうです。
さあピィ子、新しい物語を作っていこう。
――ピィ子がうちにくるまで|おしまい――
●
犬種:ミニチュア・ブルテリア
飼主:高栖匡躬 ・ピーチーパパ
▶プロフィール
▶ 作者の一言
▶ 高栖 匡躬:犬の記事 ご紹介
▶ 高栖 匡躬:猫の記事 ご紹介
Follow @peachy_love
こんな効果もあります:愛犬、愛猫を今すぐ100倍可愛くできる、最も簡単な方法
●
――もう一度、うちの子がうちにくるまで・次話――
記事の準備中です
皆様の投稿をお待ちしています。
――もう一度、うちの子がうちにくるまで・前話――
●
――もう一度、うちの子がうちにくるまで、第1話です――
一見屈強で男の中の男と言うイメージの作者。
しかし作者は、先代犬のバーディーを亡くし、毎日泣いて暮らしていました。
そんな作者に、新しい出会いの時がやってきます。
さて、新しい子は、どのようにやってきたのでしょう?
●
先代犬の まっくす と はな がうちにくるまで
まっくすは、夫が独身時代から飼っていたケアンテリア。
元気MAXでやんちゃな犬。
私達は結婚して、まっくすと私は家族になりました。
私の子供の頃からの夢は、大好きな犬との生活。
リードを持っての散歩の時、私はいつもワクワクしていました。
夫婦共に柴犬が好きでした。先住犬もとても可愛いかったのですが、もしも2匹目を飼うことがあれば、柴犬にしたいと思っていました。未来の夢として――
ある日のこと、2人は偶然に、柴犬専門店をみつけました。
中に入ってみると――
ごめんね、はな - 君を送る日
私が愛犬はなを迎えたのは、15年も前のことでした。
小さな幼犬だったはなは、やがて老犬になり次々と病気を抱えました。
1つ1つ困難を乗り越えてくれたはな。
しかし、とうとう介護の時がやってきます。
一生の締めくくりのその時期、私たちはある選択をしました。