犬を飼うということ

Withdog 犬と飼い主の絆について

【ドッグフードの疑問】穀物と野菜は悪者なのか?(4/4)~多様性が大事でなのでは?~

本当に穀物と野菜は不要なのか?
穀物と野菜は不要なのか?

撮影&文|高栖匡躬
 
こんな方に
愛犬のフード選びで悩んでいる|ネットの情報は信じられるのか?|色々な情報が氾濫していて、何を信じていいか分からない|プレミアムフードはそんなにいいの?|穀物は体に悪いの?|野菜は体に悪いの?|情報を俯瞰した解説が欲しい

 

【目次】

4回に渡った連載も、今回で最終回です。

プレミアムフードを推進する方(主に業者か、業者に近い人)たちは、犬は本来肉食動物だ という言い方をします。腸が短く、穀物や野菜を消化するのに適していない。だから穀物や野菜は必要ないし、むしろ食べる方が不自然なのだと。

そのロジックは本当でしょうか?
そういう考え方が、もしかすると事の本質を曇らせているのではないでしょうか?

 

犬は肉食動物なのか?

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犬の先祖が狼であったというのは確からしい定説です。狼でなかったとしても、それに近い肉食動物であったのだと思います。

もしも今、犬を大自然の中に放てば、彼らは生存のために集団で草食動物を狩るに違いなく、決して草や木の実を食べることはないでしょう。なぜならば、彼らには生の植物を分解して栄養にするための、高性能な消化器が備わっていないからです。

しかしながらこれを持って、犬は肉を食べるべきで、穀物や野菜を食べるべきでないと言うのはあまりにも早計というものです。犬は長く人間と暮らす中で、獲得した機能があります。それは狼よりも長い腸です。

狼よりも長く、人間よりも短い犬の腸は、人間ほどではないにしても、狼よりは上手に穀物や野菜を消化できるのです。

犬に既に備わっている能力を否定するのではなく、肯定的に解釈してみたらどうでしょうか? 例えば次のように考えるのです。

自然界に暮らす野犬は、草食動物の臓器を食することで、植物由来の栄養素を体内に取り込むことができるが、人間社会に暮らす犬はそれができない。そこで飼い主が、野犬ならば、本来草食動物から摂取できているはずの、足りない栄養素を補償するため、犬が十分に消化できるように加工した、穀物や野菜を与えてやらなければならない。

自然界においては犬は肉食を行い、人間社会においては犬は雑食である。
それが犬という動物の生きる術。

ちょっとした視点の切り替えだけで、随分と犬の見方が変わるのではないでしょうか?

 

 栄養素という観点から食事を考えてみる

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ここで、栄養素と言う側面から食事を考えてみましょう。

動物が生存するために必要なのは、必須栄養素です。
必須栄養素を調べてみると、アミノ酸、脂肪酸、ビタミン、ミネラルだそうです。

なんとこの中には、糖が入っていません。(糖は必須ではない)
糖は炭水化物から作り出されるものです。つまり動物は、5大栄養素の中で炭水化物だけは摂取しなくても、理屈の上では生きていけるのです。 

――5大栄養素――
アミノ酸(タンパク質)、脂肪酸、ビタミン、ミネラル、炭水化物。

ここで誤解が起きやすいのは、次のような考え方です。

以下のように考えがちですが、このように考えてはいけません。

アミノ酸 = タンパク質 = 肉
糖 = 炭水化物 = 穀物

 

実際は、我々が ”肉” と呼んでいるものは、タンパク質だけでなく、実に様々な要素で構成されており、そこには脂質、ビタミン、ミネラルも当然含まれています。

我々が ”穀物” と呼んでいるものだってそうです。そこには脂質、ビタミン、ミネラルが含まれており、さらにタンパク質までもが含まれているのです。

肉を食べない草食動物が生きていられるのは、草や木の実、穀物などから、タンパク質を含む十分な栄養素を摂取しているからなのです。

これを犬に当てはめて考えると、肉しか食べない犬も、穀物しか食べない犬も、理屈上は生きてはいけることになります。

しかし、それだと栄養素の過不足が生じ、犬の健康に影響を及ぼします。
だから飼い主は、そんな食生活を送る犬たちには、様々な方法で足りない栄養素を補給してやります。簡単にそれをやるならサプリメントで。手を掛けられるなら、不足成分を含む食材を、フードに足すわけです。

(実は、何をもって”健康”というかも大事な論点であるのですが、話が複雑になるので、ここでは考えないことにします)

我々飼い主は、犬を生存させるという目的で、餌(フード)を毎日欠かすことなく与えます。そして犬を健康にさせるという目的で、その餌に様々な工夫をします。

その工夫の具体的なバリエーションとしてドッグフードと手作り食があり、更にドッグフードのバリエーションとしてプレミアムフードや一般のフードがあるわけです。

バリエーションだからこそ、多様な考え方や手法があって当たり前。
時々、手段と目的がすりかわるから、いらぬ軋轢が起きる。
その軋轢を利用して、利益を上げようとするアフィリエイト業者がいて、それを煽る。

今回この記事で提起してきた事柄は、実はこんな単純な図式で表現できることなのだと思います。

 

 アレルギーは、切り離して考えるべき

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ドッグフード原料に関する評価記事には、アレルギーの問題にまで言及したものが多々あります。やり玉に上がるのは、トウモロコシ、大豆、小麦などです。

しかし、アレルギーは穀類でだけ生じるものではなく、肉類でも発症します。因みに我が家の愛犬ピーチーは、牛肉にアレルギーがあって、牛革の首輪が付けられませんでした。

アレルギーを発症する恐れがあるものは、ドッグフードの原料として不適切と言うのなら、肉類もそうであるはずです。しかし、いちいちそんなことをしていたら、食べるものなど無くなってしまいます。

そもそもアレルギーは、犬という種に起因するものでなく、個体に起因するものです。
アレルギー反応を示す個体が、それを食べなければ良いだけの話だと思います。
(特定の食材に対する犬個体のアレルギー反応は、検査をすればすぐに分かります)

フードの記事の中には、「犬は食材を選ぶことができないのだから」という記述もあります。犬が自分で選べないのだから、アレルギー物質が入っているフードは最初から排除すべきという理屈です。

しかし、犬は選べなくても、飼い主は選ぶことができます。
犬と飼い主は一体であり、飼い主が注意深く選択してやれば良いだけの話です。
『犬は食材を選ぶことができないのだから、飼い主がしっかり選んであげなさい』
というだけのことです。

敢えて書くとしたら(少々刺激的な書き方ですが)、『意識の低い飼い主は、食材を選ぶことができないのだから』ということになるのだと思います。

アレルギーの話は、個体ごとに語るべき話だと思います。

犬と言う種にとって、特定の食材(ここでいう穀類と野菜)が適当なのかどうという議論をするのならば、もっと広範囲な調査データや統計資料を元に語られなければ、意味が無いように思います。このままではただの憶測記事になってしまいます。

基礎が不十分な中に、個の要素を持ち込むので、そもそもの議論がすれ違う結果になるのです。

 

 本当に大切なのは、多様性なのでは?

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人間の場合、なるべく多くの食材を食べることが良いとされています。
例えば厚生労働省は、1日に30種類の食材を食べることを推奨しています。

5大栄養素をバランスよく食べるには、カロリー計算をしながらきちんと栄養管理をする必要がありますが、皆が皆、栄養学の知識を持つのは無理な話。
だったら沢山の種類のものを、取り敢えずは体内に取り込んでおけば良いという考え方がこれです。余分なものは体外に排出されることが前提です。

同時にこれは、特定の食材に対するリスクを下げるための食べ方でもあります。

犬だって根本は人間と同じです。しかし犬が食べることができる食材は飼い主に依存しており、その飼い主に経済的、時間的余裕があって、手作り食を与えない限りは、極めて限定されてしまいます。

余裕の無い飼い主が、ドッグフードで似たようなことをやるなら、フードローテーションが良いと思います。1つのブランド、1つの商品に限定せず、定期的にフードを別のものに切り変えていくのです。

当然ながらこれを行うためには、選択肢は多いに越したことはありません。そのためにも、穀物と野菜が不要という先入観は、一度取り去ることが大事だと思います。

食に関する考え方は、時代に応じて変わります。
必須栄養素だって、時代で解釈が変わるほどです。
だからこそ、どんなことが起きても大丈夫なように、多様性が重要になります。

視野を広く持ち、懐を深くすれば、犬の食に関する多様性は大きく広がるはずです。
そしてそれは、愛犬にとってメリットのあることだと思います。

 

 最後に

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病気になって食が細くなった愛犬ピーチーのために、一度食事について考えてみようと思い、ネットを検索したことが、この記事を書くきっかけになりました。

驚いたことに、そこにはあまりにもたくさんの、バイアスのかかった情報が蔓延していました。読めば読むほど怖くなったし、同じ記事を読んでそれを鵜呑みにされる飼い主さんがいるかもしれないと思うと、いたたまれない気持ちになりました。

大変に微妙な問題なので、実は書くべきかどうかを迷いました。
この記事を書くことで、筆者が意図していない誰かを批難し、傷つけることになるかもしれないと思ったからです。

しかし書くことにしました。やっぱり気付いたことは放っておけなかったからです。

記事中で何度か申し上げましたが、筆者はプレミアムフードを批判する立場ではなく、穀物や野菜を食べることを推奨しているわけでもありません。

一度中立の立場に立ち返って、冷静に愛犬の食事を考え直しましょうということを、皆さんい呼びかけているつもりであり、それ以外の意図は一切持っていません。

この記事を書いた当時、我が家のピーチーは残念ながら、先に書いたフードローテーションさえもできる状態でなく、数少ない選択肢の中から消去法で食事を選んでいる状況でした。もっと早く気が付いていれば、食事も色々と気遣ってやれたのにと、少し後悔もしました。

正直言って、食事の記事がこんなに長くなるとは思いませんでした。
書けば書くほど、考えなければならない課題がでてきてしまい、しかも慎重に書いたので時間も掛かりました。そして随分と割愛したつもりなのに、結局4回連続で同じテーマで書くことになりました。

まだ書き足りないことが沢山あるのですが、それはまたいつかの機会に。

この記事を読んできださった方が、愛犬の食事について考える切っ掛けにでもなれば良いなと思ってます。

(本記事は2015年に執筆したものを、リライトしました)

 

(追記)この記事を公開した理由

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本連載記事は、4年前に書いたものに加筆をしたものです。
リライトするきっかけは、先日、米国のFDA(食品衛生局)が、グレインフリーフード16ブランドを名指しして、心臓疾患との因果関係について警鐘を鳴らしたためです。

この記事は下記です。

なんとこの16種類のフードのうちの幾つかは、多くの記事が特に推奨してきたもので、日本にも多くのユーザーがいると思われます。そして内2種類は、終末期のピーチーに食べさせてやろうと、筆者が購入したものでもありました。当時フードについて慎重になっていた筆者も、買ってしまったのです。

常識は変わるものだと考えると、本当にフードローテーションの大事さを思います。

基本となる4記事は本話で終わりですが、その後のフード記事の動向や、上記記事に対する所感などもまとめておこうと思っています。

 

次回より、本連載で書ききれなかったトピックを、3回に渡ってお届けしようと思います。

 

――穀物と野菜は悪者なのか?(4/4)つづく――

文:高栖匡躬
 ▶プロフィール
 ▶ 作者の一言
 ▶ 高栖 匡躬:犬の記事 ご紹介
 ▶ 高栖 匡躬:猫の記事 ご紹介

――次話――

次話からは補足編(全3話)です。

ネット情報が伝えるフードの情報は、落ち着いて考えると矛盾だらけ。
一体何が正しいのか分からないですね。
常識として語られていることを、一つ一つ疑問点として取り上げてみようと思います。

――前話――

野生の肉食動物が捕食するのは、主に草食動物。
血液には植物由来のビタミン、ミネラルが含まれ、内臓には消化過程の発酵した植物が残っています。植物を食べなくても、栄養素は接取できるわけです。
では、それを犬に置き換えるとどうなる?

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

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――この連載記事の1話目です――

ネット上にはドッグフードの記事が沢山ありますね。
穀物は有害? 野菜は有害? 本当に?
全部真に受けたら、食べるものが無くなるんだけど。
記事が推薦するフードは、愛犬に良いものなのか?

 食べムラ・偏食に関するまとめ読み

~基礎・原因編~
愛犬の食事に関するトラブルの中は様々
用語の定義と、食べムラ・偏食に陥る原因をわかりやすくまとめました。
色々な原因で食べムラ・偏食は発生します。
まさかのときの準備のためにどうぞ。

~予防・対応編~
食べムラ・偏食の予防は、犬の一生を組み立てる長期的な意味があります。
一生食べる楽しみを残すために、今やることは?
そして、もしも起きてしまったら、どうやって対応したらいいのか?

~治療・まとめ編~
食欲不振の理由は様々ですが、過度な偏食に発展すると健康に影響があり、時に命を左右します。
飼い主さんの努力で改善できない場合は、医療としての対応が必要です。
投薬治療と、栄養療法を
――それと、食べないことの意義についても考えます。

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