うちの子がうちにくるまで|No.39
夫婦共に柴犬が大好きでした。結婚前から夫が飼っていたケアンテリアが家にいて、その子もとても可愛かったのですが、もしも2匹目を飼うのならば、柴犬にしたいと思っていました。しかしそれはすぐにではなく、いつかは――、と思っていたのです。
ある日、そんな私たちに、突然の出会いが待っていました。
柴犬ってどんな犬?|今まで犬を飼ったことがない|初めて飼うのが不安|皆さんどうやって飼うのを決めるの?|経験者の話が聞きたい
今日は我が家の愛犬、はなのお話をしようと思います。
私にとってはなは、3頭目の犬です。
子供の頃には雑種の「ベル」が実家にいて、結婚してからは夫が飼っていた、ケアンテリアの「まっくす」が私の家族になりました。はなはその「まっくす」が3歳の頃に迎えた子です。
はなを迎えることにした理由は、突然の出会いがあったからです。
2004年11月6日――、夫婦で外出した時のことです。
たまたま柴犬専門のお店の前を通りかかり、「帰りにも開いてたら覗いてみよう」という話になりました。
これだけでもうお察しでしょうが、私たち夫婦は柴犬が好きなのです。
どんなところが好きか?
もう全部です。短毛の素朴な佇まい、肉厚のキリッとたった三角耳、特徴的な尻尾などなど。それから、素直で真面目そうに見えて、実は何か企んでいそうな表情とも……
(最後の1つは、うちのはなに限るのかもしれませんけれど)
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柴犬好きとは言うものの、この時点で2匹目を探していたわけではありません。
いつか迎えるならば、絶対に柴犬とは思っていましたが、まだまだ先の事だと考えていました。
夫の方も、私の考えに異論はありませんでした。1匹目の時も、柴犬かケアンテリアか迷ったのだそうです。
数時間後のこと――、幸いお店はまだ閉まってはいませんでした。
私たちは、お店の扉を開きました。大好きな柴犬を見るために――
お店の中には、大きなケージが1つありました。
中をのぞくと3匹の子犬たち。
店主さんに訊ねると、「きょうだいです」とのこと。
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「抱いてみてもいいですか?」
私は一番側にいた子犬を抱き上げました。
生れて初めての柴の子犬――、私はもう興奮状態です。
やがて、夢中になっていた私に、夫が声を掛けてきました。
「あの子は?」
夫が指さしたのは、ケージの一番奥の暗がり。そこには動き回る2匹と違い、おとなしそうな子が、一匹だけ小さく縮こまっていました。
私たちはなんとなく、その佇まいに心惹かれました。
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私は抱いていた子犬をケージに戻すと、その子も抱かせてもらいました。
感触は――
ビロードのようなやわらかな毛並み。
優しく抱かないと壊れてしまいそうで、か弱くて――
でも、ほんわりとあたたかくって、しっかりと生きている。
私は今もその手触りを、覚えています。
その子はちょっと怯えていたけど、私の目を見てくれました。
その瞬間、私はその子を飼うと決めました。
言うまでもありませんが、その子犬こそが、我が家の愛犬はなです。
そういえばあの時――、夫もはなを抱いたんだっけか?
ふと気になって、夫に訊ねてみました。
「抱っこしなかったわけないよね?」
しかし夫は、覚えていないそうです。私も覚えていません。
『この子を迎えよう』
ふたりの決意だけが、あの時の思い出です。
さて、飼うことは決めましたが、そのまま連れて帰るわけにもいきません。
家に迎えるための準備を整えて、ハンディのケージを車に積んで、一週間後に迎えに行きました。
先輩犬まっくすとの相性が少々心配でしたが、こればかりは合わせてみない事にはどうなるか分かりません。
そうそう、はなの名の由来ですが、優しげで柔らかい響きの名前にしたくて、そう決めました。
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会ってから1週間後の、11月13日がうちの子記念日となりました。
うちに来たはなは、ケージから出てくると、恐る恐る…という感じで、部屋の中を少しずつ歩いて、何かを確認しているようでした。しかしそれも、はじめのうちだけです。すぐに家にも家族にも慣れてくれました。
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はなはとてもとても甘えんぼで、家の中が大好きでした。
散歩が苦手な子にしてしまったのは、ちょっと反省点です。
心配をしていた、先住犬のまっくすですが、初めは近寄って匂いをかいだりしていましたが、そのうち自分のいつもの居場所に落ち着きました。
その時のはなは、警戒しつつも、されるがままでしたね。
その後は、お互いほぼマイペースです。
仲がよかったという程ではないのですが、ドッグランに行けばなんとなく、まっくすは、はなのことを近くで守ってくれるようで、頼もしいお兄ちゃんでいてくれたように思います。 ただ、音の出るおもちゃは、激しい取り合いになりましたっけ。
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11歳の頃からまっくすは、癲癇発作が起きるようになりました。一年くらいで落ち着き、病気のことも忘れかけていたある朝に、突然また発作が起きて、そのまままっくすは、虹の橋へ旅立ちました。5年前の12月です。13歳と3ヶ月でした。
まっくすがいなくなったはなですが――
悲しむかと思いきや、薄情にも、あまり変わらなかったのです。
はなはいつもマイペースなのです。
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そんなはなも、つい先日、7月21日午前10時過ぎに亡くなりました。あと2週間で15歳でした。素敵な企画に参加させていただき、この記事の公開を一緒に喜びたかったですが、叶いませんでした。
でもこんなところも、マイペースなはならしいのかもしれませんね。
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はなちゃん、ありがとね。
あなたに逢えて、本当に幸せだったよ。
また逢おうね。
きっとあなたを見つけるからね。
待っててね。
――はながうちにくるまで|おしまい――
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――うちの子がうちにくるまで・次話―――
ブルテリアは怖い犬だと思っていました。
しかし友人の愛犬ボブを見て、すっかりに虜に
そのボブに子供が生まれ、すぐに会いに行きました。
思い思いに歩き回る仔犬たち
気付くと、足元にずっとついて来る子がいました。
――うちの子がうちにくるまで・前話―――
『ハナちゃんの動物病院』のハナちゃんのお話。
ハナちゃんママが獣医師を目指したのは何故?
獣医師が犬を飼うって、どういう気持ちなの?
ママの色々な思いを受けて、ハナちゃんは今も病院の看板犬を務めています。
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この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――うちの子がうちにくるまで、第1話です――
昔からいつかはワンを飼いたいと、ずっと夢見ていたんです。
でも、夢と現実の差はでっかいですよね。結局はずっと、実現できずじまい。
――そんな夢を叶えた飼い主さんのお話。
犬との出会いは運命に似ています。
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愛すべき柴犬たち
初めはウサギが欲しかった。そんな娘さんとの約束事。
しかしその約束は、いつの間にか犬を飼うという話に――
動物を飼うことに消極的だったお父さんは、約束を守れるのか?
結婚7年目の夫婦。
犬が大好きなのに、妻は自分の病気のために、飼うことは諦めていました。
ある日、夫が「犬を飼おう」と提案します。
夫婦は、犬を飼うことができるのか?
犬は必ずしも。家族全員に歓迎されて家に迎えられるわけではありません。
保護犬の場合は、特にそうでしょう。
“飼いたい!”から始まる愛情もあれば、飼ってから芽生える愛情もあります。
先代犬を亡くし、ペットロスだった飼い主。
しかし――、ある日のこと――
「家に帰ったら、子犬がいた」
さて、その犬とは?
犬を迎えたのは、当時学校に疲弊していた一人息子のためです。
息子が突然「犬を飼いたい」と言い出したのです。
一度も犬を飼ったことはありませんでした。
それでも飼おうと思いました。