うちの子がうちにくるまで|No.64
子供の頃に実家で犬を飼っていた作者。しかし大人になってからは、仕事もプライベートも忙しくて、犬を飼うという考えに及びもしませんでした。
ある日見た夢に導かれるように、また犬を飼い始めた作者。
初めての多頭飼いをし、別れを経験し、保護犬の存在を知って家に迎えて——
やがて犬に関わる仕事に就きたいまでと考えるようになります。
そして――、新しい保護犬が家にやってきました。
今度は、遺伝性の疾患がある子を、敢えて迎えることに決めたのです。
人は犬に触れて変わって行くのでしょうか?
もしかすると、人は犬に育てられているのかもしれません。
動物は好きなんだけど、犬や猫を飼うのは心配|はじめてなので、もう一歩が踏み出せない|同じような経験をした方はいますか?
我が家にやってきた4匹目の子
先日我が家には、4匹目の子『ポピー』を迎えました。今日はそのポピーのお話をしたいと思います。
最初に我が家の犬歴をご紹介しておきます。
我が家には元々『ちんねん』と『きなこ』というチワワがいました。2匹はとても仲良しだったのですが、昨年(2020年)ちんねんが亡くなってしまったために、きなこが元気を失くしてしまいました。私は寂しそうなきなこのために、3匹目の子『チョンキー』を迎えました。
きなこは、チョンキーという新しい相棒のお陰で元気を取り戻し、新しい生活が始まりました。私はその平穏がずっと続くと思っていました。
きなこの年齢は13歳。一般的にはもう老犬と呼ばれている年齢です。
しかしきなこは老犬のようには見えず、白内障もまだそんなに出ていませんでした。私はきなこの目が白くなるのを楽しみにしていました。私にとっては、白くなりかけた目が老犬の証で、そこからが可愛い老犬時代のお世話が始まると思っていたのです。
しかしそのきなこを、突然の発作が襲いました。
病院に駆け込んで、一時は回復するかに見えたのですが、別れはその翌日にやってきました。
「え、なんで?まだ早いよまだあなたの老犬時代見てないよお世話してないよ」
私は愕然としました?
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きなこは静かな子でしたが、我が家ではお姫様扱いでした。その分存在感は大きかったようで、居なくなってしまったのについ、いつも居た場所を見ては「あぁそうだ…」って思い返してしまう日々――
おやつもフードもペットシーツも全然減らず、それもまたきなこの不在を実感させました。
チョンキーは1人になった寂しさからか、私への依存が急に強くなりました。私の在宅時には片時も私の側を離れず、少し見えなくなると鳴きまくります。
病院で相談した所、先生は、
「きなこさんが亡くなって、自分を守ってくれる甘えられる存在が飼い主さんだけになった事が大きいでしょう」と――
そして「それが依存に拍車がかかった原因であるとすると、いつかもう1頭迎えた方がチョンキー君には良いかもしれませんね」と付け加えました。
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私はきなこが亡くなった時から「また犬を飼いたいと」思っていました。一方、主人は新しい子を迎えることには反対でした。きなこが亡くなった時には「もう暫く犬は飼わない」って呟いていたほどです。
我が家では犬を飼う時は、いつも私の方が主導権を握ります。猪突猛進な性格が、慎重な主人を押し切るのです。きなこもそうですし、チョンキーもそうでした。だから今回も同じでした。
チョンキーの寂しさゆえの問題行動が、私の背中を押してくれました。
それから私は保護犬サイトを見たり、譲渡会やっていないかなぁとネットをメインに探しはじめました。
初代のちんねんと、次のきなこまでは、ペットショップ以外に犬と出会う方法を知らなかった私ですが、SNSを始めてからは繁殖引退犬の存在を知り、3匹目のチョンキーは、ペットショップに行くことはなく、はじめから保護団体から迎えました。その流れでの4匹目なので、やはり探すのは保護犬です。
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私は今、犬に関わる仕事に就きたいと思って、トリミングスクールに通ってるところなのですが、そこに行くようになってから、私の保護犬への思いはますます強くなっていました。
私のスクールでは、一般のお客様から愛犬をお預かりして、カットさせて貰うことが実習の1つになって、私は毎日様々な犬種、様々な大きさの犬たちと接しているのですが、その中にはブリーダーに飼われている犬も混じっています。実はそういう子のなかに多いのです――、汚くて痩せていて愛情不足の子が――
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聞けばブリーダーの中には質の悪い繁殖をしている人たちも結構いるようです。だから私は、そんな子に遭遇するたびに、劣悪な環境の中にいる犬が1頭でも減るようにといつも願っていました。
誤解のないように申しますが、私は全てのブリーダーが悪いと言っているわけではありません。スクールにはブリーダーを家族で経営してる生徒さんもいて、そこの子はみんな綺麗でニコニコしていて、良い環境で育てられています。
こんな背景があるものですから、私の頭の中ではチョンキーと同様に、保護犬だけしか選択肢はなかったわけです。
こうして保護犬サイトを毎日見てた私でしたが、すんなりと4匹目は決まりませんでした。
割と早くから見付けて気になっていた子はいたのですが、その子はミスカラーで、遺伝的な疾患を抱えている可能性が高い犬だったので、踏み切ることができませんでした。(実はその子は、写真を見た段階で既に目に疾患が現れていました)
しかしそれからも何故か気になって、ちょいちょいその保護犬サイトを訪れては、その子の動向を気にしていました。
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別の保護犬サイトでも気になる子を見つけました。その子はてんかん持ちでした。
しかしてんかんだったら、何とかなるかなと思いました。我が家の初代犬であるちんねんが、てんかんを患った経験があったので、対応出来ると思ったのです。
問い合わせをしてみたところ、団体からの返事は「1頭飼いして欲しい」とのこと。
それが譲渡の条件であれば諦めるしかありませんが、私はその子が気がかりで、それからもずっと行方を見守り続けました。
後日のこと――
てんかん持ちの子は無事に譲渡されたようでサイトの掲載から無くなりました。結局、私はその子を迎えることはできませんでした。しかしこのことで、私は考え方が変わりました。
「てんかん持ちの子を引き取るろうとしたんだったら、遺伝疾患が出る可能性高い子引き取っても同じかな」と――
つまり、最初からずっと気になっていたミスカラーの子を、もう一度考えてみようと思ったわけです。
私はサイトで初めてその子を見た時の、その子の瞳が忘れられなかったのです。
フラッシュを焚いたカメラに映る瞳は、悲しそうで寂しそうでした。
※上の写真がそのときのものです。
「あぁこの子を家族にしたいなぁ…」
そんな風に思いました。「うちに来るかい?」
そこからはいつもの猪突猛進モードです。早速その子のいる保護団体にメールを送って面談の約束を取り付けました。
主人には事後報告でした。その反応はというと――
「ダメだ!また勝手に申し込んで」
と、怒られました。
「会いに行ってチョンキーと合わなかったら諦めるから!会いにだけ行こう」
と、私。
主人は「チョンキーと大丈夫なら引き取る気満々じゃないか!」と、怒りつつも当日の日時と場所を確認をしてきました。
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後日、約束の時間15時に面会場にいくと、その子はポツンと寂しそうに待っていました。他の子は誰かに抱かれたり触られたりして楽しそうにしているのに、その子には表情もあまりありません。
それから保護団体の方に名前や住所等を確認され、いよいよ個人面談。
最初の一言はなんと――
「ペットショップより安いから引き取るんですか?」
と…驚きの質問です。担当さんは最初から警戒モード。
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私は「この子…疾患出てるし、ペットショップで買うより医療費高くつくのだと思いますけど」と、笑顔で返しました。すると担当さんは「いま、犬が高いからそんな考えの飼い主が多くて、病気になったら返すと言う人なんかもいるので質問しました」とのこと。なるほど、警戒するのも分かります。
私は我が家のチョンキーが保護犬であることと、私が現在トリミングの学校行っていることを伝えました。きっとそれで我が家の姿勢が分かってもらえたのでしょう。そこからはスムーズでした。
抱かせてもらったその子は、とにかく『可愛い』に尽きました。
「でもあれ? ポメラニアンだよな? チワワ?」
ちょっときなこにも似ていました。
その子は保護団体ではポピーと呼ばれていました。
ポピーは初めての出会いに緊張しているためか、固まって動きません。相性を見るために連れて行ったチョンキーとは、お互い臭いを嗅いでから知らん顔――
担当さんから「喧嘩もしてないし…大丈夫ですね」と言われてチラッと主人を見たら、主人はポピーとチョンキーばかり見ていて、私の視線に気が付きません。
そうです。実はこのとき主人は、もうポピーに瞬殺されていました(笑)
主人は私が飼いたいというといつも怒るクセに、本当は大の犬好きなのです。もしかすると私以上に。
「うちの子にならないかい?」
「うちでゆっくりしてみない?」
私はポピーに話しかけました。
そして一応、主人にも最後の意志確認です。
既に答えは分かっているようなものですが。予想通り、主人からは「早く手続きしろよ」と急かされました
「この子を可能ならうちの子にはしてもいいですか?」
私は担当さんにそう伝えました。
それからは引渡し手続きの説明があり、引渡し日が決まりました。
当日は保護団体の方が遠路自宅まで届けに来てくれました。
5月2日に会いに行き、6日には家に来るというスピード感です。
その子の名前は、保護団体呼ばれていたポピーのままにしました。
人見知りそうなその子の感じから、無理に名前は変えずにそのまましようと思いました。
こうしてうちの子になったポピー。
恐がりなので、はじめの内はずっとゲージに入ったまま出てきません。出そうとすると逃げだしてしまいます。
でも、首尾よく捕まえられた時に抱きしめてあげて「怖くないよー」と言ってあげていたら、そのうちに慣れてくれました。
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チョンキーとの関係は、初めて施設で会わせた時とそう変わりませんでした。お互い関心も持たずという感じで、近くに来ても唸ったりもしません。
しかしチョンキーには、期待した通りに良い変化がありました。
まずは、きなこがいなくなって以来、強くなっていた私への依存が減りました。そしてこれまで、余り懐かなかった夫のとこへも甘えに行くようになりました。
この記事を書いている今は8月。ポピーを迎えてから、早3か月が過ぎました。
チョンキーは先住犬ですが、兄貴と言う感じはありません。むしろポピーにお世話で耳を舐められたりしているので、むしろポピーから子供扱いされるような位置づけなのかも。
そしてポピーはというと――
「男性恐怖症」で、未だに夫にはビビりうんこして逃げます。
でもニコニコしてる時も増えてきました。夫とはきっと、こうやってゆっくり打ち解けて行くのだろうと楽観しています。
2匹でいると、たまに遊んだりくっ付いて寝ていますが、基本は今もお互いがマイペースです。
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私は、ちんねんときなこが居てくれたから、今のチョンキーとポピーがいるのだなあと思うことがあります。やはり命は繋がってるんですね。
――ポピーへ――
うちに来てくれてありがとう。
幸せになろうね。
――ママより――
こちらは先代犬、先住犬たちのお話です
ちんねんがうちにくるまで
子供の頃は、犬を飼っていました。
しかしその子が去ると、もう犬と暮らすことはありませんでした。
時が過ぎ結婚をした私は、ある日夢を見ました。
草原で犬を散歩していました。
目が覚めた私はすぐに「あ、犬を飼いたい…」と思いました。
きなこがうちにくるまで
それは友人と出かけた、ペットショップ&カフェでの出来事でした。
世の中はチワワブーム。驚くほど高額なチワワもいるその店には、売れ残った貧相な姿の子がいました。
私の手をよじ登って来るその子。
私は夫にメールしました。
「もう1頭飼いたい」
チョンキーがうちにくるまで
初代犬のちんねんが旅立つと、残された きなこの元気がなくなりました。
――このまま弱くなってしまうの?
不安な私は「もう1匹迎えたらどうだろう?」と考えるようになりました。
次は保護犬を――
オンライン譲渡会を見つけたのは、そんな時でした。
――ポピーがうちに来るまで|おしまい――
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――うちの子がうちにくるまで・次話――
皆さまのご応募をお待ちしています。
思い出は文章にしておくと、いつでも鮮明に蘇るんですよ。
――うちの子がうちにくるまで・前話――
マロンがうちにくるまで
犬の平均寿命は15年ほど。
自分の歳を考えたら、次の子を迎えるのは無理だな。
――そんな風に思っていました。
しかし段々と心境に変化が――
もしかしたらいけるかも。
そう思えるようになって――
「もう1人迎えるよ!」
私は家族を洗脳しはじめました。
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――うちの子がうちにくるまで、第1話です――
昔からいつかはワンを飼いたいと、ずっと夢見ていたんです。
でも、夢と現実の差はでっかいですよね。結局はずっと、実現できずじまい。
――そんな夢を叶えた飼い主さんのお話。
犬との出会いは運命に似ています。
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