うちの子がうちにくるまで|No.25、No.26 - 2
今日のお話は
臍の緒がついたまま拾った2匹の子犬は、必死に生きようとし、哺乳瓶に必死で吸いつきました。
やがて、へその緒が落ちて、可愛い目が開いて、歯が生えて……
――もう安心と思った作者。
譲渡会に連れて行こうとしたその日のこと。
また偶然の巡り合わせがやってきます――
子犬は里子に出されてしまうのか?
こんな方へ:
保護した子犬が無事に育った|里子に出す時期になった|どうしたらいい?|経験者の体験談を聞きたい
命を繋ぐ哺乳瓶
命つきるかと思われた仔犬たちは、私の思いを察したのでしょうか?
牛乳を入れた哺乳瓶に必死で吸いつきました。
この仔たちは一週間ほどでへその緒がおちて、2、3週間くらいすると、可愛い目が開きました。歯が生えてきたので、フードをふやかして離乳食にしました。
●
白いフワフワの毛が生えそろうと、その体を斜めに傾けながらトコトコと走る姿は、シロクマの仔のような姿で本当に愛らしくて愛らしくて。
『ちょび』はピョンピョンと飛びつく仔たちを、鼻で転がしていました。
この仔たちの名前は、近所の小学生がつけてくれました。
男の仔は、アニメのドラコンボールから『ごはん』の名をいただきました。
女の仔は、『ごはん』にはやっぱり――
ということで、『おかず』になりました。
こうして『ごはん』と『おかず』は、近所の子供たちの人気者になりました。
●
実を言うと、この頃の私はまだ迷っていました。
「やっとのことで『ちょび』を迎え入れたばかり」
「犬を3頭も飼えない」
「この仔たちは誰かに貰ってもらおう」
これは、私の心の声です。
動物交換会
ここからの写真は、私が撮影した『ごはん』と『おかず』です
そうこうしていると、近所の奥さんが「◯◯市の動物交換会があるわよ。こんなに可愛いから、そこへ連れて行けば飼ってくれる人が見つかるわよ。」と、教えてくれました。
●
「そうよね」
こんなに可愛いんだから、きっと優しい家の子になって可愛がられるはず……
そんなふうに思いこもうとしながら、11月3日の動物交換会の日がやってきました。
私はその朝を寂しい、虚しい、後ろめたい、イライラした気分で迎えました。
●
それでも私は気を取り直して、可愛いさかりの『ごはん』と『おかず』を私の知らない優しい誰かに託すために車を走らせました。
後部座席で初めてのドライブに、不安そうな『ごはん』と『おかず』を気にしながら。
◯◯市保健所は、商店街の細い道を抜けたところにありました。
ゆっくり運転してましたが、やはり私は焦っていたのでしょうね。
なんと、人身事故を起こしたのです。
もう、パニックでした。
●
私は救護と事故処理のために、『ごはん』と『おかず』のことは夫に任せました。
そして3ヶ月間、一生懸命育てた仔が夫に連れられて保健所に行くのを何も考えられずに見送りました。
お帰り~
夕方に疲れはてて帰宅した私は、リビングのドアを開けてビックリしました。
『ごはん』と『おかず』がいつものように「お帰り~」って、私の足に飛びついてきたのです。
●
私は夫から、ことの経緯を聞きました。
夫は動物交換会に、遅れ着いたそうです。
そして、係りの人から説明を聞きました。
時間内に里親がみつからない場合は、殺処分されるこということを……
●
会場になっている広場には、血統書があるような2ヶ月位の可愛い仔犬がたくさん里親を待っていたそうです。
それを見た夫は、どうしても『ごはん」と『おかず』を残して帰って来れなかったと、言いました。
●
私は夫を誉め称えたい気分でした。
そして、この人が夫でよかったと感謝しました。
この日、『ごはん』と『おかず』はうちの子になりました。
あの子たちは天使だったと思う
私は思いました。
神様はきっと、私の独りよがりな考えに気がついて、罰を与えたのだと。
事故の被害の方には、本当に申し訳なく思います。
私の受ける罰に、巻き込んでしまいました。
しかし幸い被害者の方は、骨にひびが入るくらいで入院はしませんでした。
私はお詫びとお見舞いをして、通院の付き添いを何回かして、示談をしていただきました。
●
今思えば、『ごはん』と『おかず』は真夏の熱い草むらの中で見つけたあのときから、うちの子になる運命だったように思います。先住犬の『ちょび』と共に、私の心を豊かにするための天使として、うちにやってきたように思うのです。
神様が私に預けてくれた天使の面倒をしっかり見ていくことが、私の贖罪なのかもしれないなあと――
私は宗教家ではありませんが、なぜだかそんな風に思えるのです。
●
『ごはん』と『おかず』は、それから12年間生きぬいてくれました。
それで、私の罪は幾らかは拭えたのでしょうか?
先に天国に行った『ごはん』と『おかず』が、いつかそれを教えてくれるのかもしれません。
――『ごはん』と『おかず』がうちにくるまで(2/2)・おわり――
●
うちの子がうちにくるまで|No.25,26 - 2
犬や猫と暮らすあなたへ
『うちで飼えるかな?』
『きちんと面倒を見られるかな?』
犬や猫を、”はじめて”飼う時、ほとんどの方はこう思ったことでしょう。
平均年齢でいえば、15年も生きる小さな命を預かるのだから当然ですね。
我々はそこで大きな決心をし、葛藤を乗り越えたからこそ、今、犬や猫と暮らしています。
どうかその思いを、忘れないでください。
その時の思いがあれば、我々はどんな時でも犬や猫と暮らしていけます。
【飼えるかな】より
●
――うちの子がうちにくるまで・次話――
本当は犬が苦手だった作者。
その作者が偶然、びっくりするほど大きな顔の犬を目撃しました。
哲学者のような振る舞いの犬――
月日がたたち、作者はその不思議な犬の置物に遭遇します。
――うちの子がうちにくるまで・前話――
作者が初めての犬を飼い始めてから3カ月後のこと。
散歩から帰ったご主人が言いました。
「へその緒がついた子犬が捨てられていた」
草むらには本当に「生きたい、生きたい」と鳴く2匹の子犬がいたのでした。
●
まとめ読み|うちの子がうちにくるまで(犬)⑥この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
週刊Withdog&Withcatこの記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
●
――うちの子がうちにくるまで、第1話です――
昔からいつかはワンを飼いたいと、ずっと夢見ていたんです。
でも、夢と現実の差はでっかいですよね。結局はずっと、実現できずじまい。
――そんな夢を叶えた飼い主さんのお話。
犬との出会いは運命に似ています。
●
同じ作者の執筆記事です
毎日、仕事帰りに、ニャーニャー鳴きながらついて来た子猫。
ある雨の日、濡れたその子猫を拾い上げました。
『おいで』と名付けたその子は、賢くて、生きる事を楽しんでいるようでした。
しかし……
愛猫を亡くした作者。
供養をした翌日、ふらりとペットショップに立ち寄ると、そこには[ただであげます]と張り紙された犬がいました。
出典